新曲「Kaiten/回転」をリリース – 22年前の曲を今になって出した理由

Arts:Out新曲「Kaiten/回転」をリリース

先日、Arts:Out名義にて、新曲「Kaiten/回転」をリリースしました。

新曲といいつつ曲自体はかなり前に作ったもので、ジャンルは、当時ダウンテンポ(Downtempo)を意識していたような記憶があります。ひたすらダークな曲調です。
各音楽サイトで配信しているので、よかったらチェックしてみてください↓

Kaiten by Arts:Out
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ボーカルは、Synthesizer V MaiとJinのデュエットになっております。Synthesizer Vの音声合成ソフトとしての実力はどんなもんじゃい、と気になる方もぜひ一聴を。

曲のアレンジの変遷

この曲はかなり前に作ったもの、と書きましたが、ファイル情報を見てみたら、原型となるものを作ったのは2002年6月でした。驚きの22年前。どんだけ寝かしてるんだって話です(笑
昔からCubaseを使っているのですが、元のファイルはアイコンが白くなっていて開けませんでした。

ちなみに最初に作ったのがこれです↓

歌がはじまるまでの出だしの部分は、今の自分なら作れない(あるいは採用しない)だろうなと感じました。昔の自分との曲作りのセンス的なところの違いもありますが、今の自分だとリスナーに離脱されるのを恐れてイントロを短くしてしまいそうです。
ちなみにこの曲はコード2つを延々とループしているだけの省エネ曲でもあります。

今の曲でも使っている、2拍目と4拍目の鐘のような音は、KORG NS5RというDTM音源のものです(というかこの曲のトラックすべてをNS5Rで作ったような気が)。
時代とともにいくら音源が進化しても、やはりこれでしか出せない音、というのはあります。
今回リリースした曲のストリングスは、KORG Triton-Rackのストリングスエクスパンションに入っていたものを使っていますが、それも同じ理由からです。今どきの高品質ストリングス音源に差し替えてみたものの、いまいちピンと来なかったんですよね。

最初に作った曲のボーカルは、Mac OS付属のText-to-Speechという音声合成機能を使っています。
歌詞に意味はなく、どこかの国の言葉に聞こえるように、というよくある感じの思いつきでやっております。意味のある歌詞を付けるのが、当時は恥ずかしかったのかもしれません。

Text-to-Speechはその名の通り、テキストを打ち込むとそれを読み上げてくれる機能なのですが、テキストエディットで音程や音の長さを指定して歌わせることもできる優れものでした。VOCALOID(ボーカロイド・ボカロ)よりもずっと前から存在した、音声合成の先駆けのようなものです。一音一音指定しないといけないので、めちゃくちゃ面倒くさかったですけどね。声の種類も、男性、女性、機械音声等いろいろありました。
誰の曲だったか忘れてしまいましたが、プロの曲でもこれを使っているのを聞いたことがあります。歌わせているのではなく、文章を読ませているだけでしたが。

Text-to-Speechに音程を付ける機能は、Mac OS X以降なくなってしまったので(たぶん)、これのためにわざわざ昔のMacBook……ではなくiBookを買ったような記憶があります。

その後、2006年に今の曲とほぼ同じアレンジのものに作り直し、歌詞も日本語にしました。

そして2011年に、今度はダブ(dub)っぽいアレンジにして、自分でボーカルを入れてみましたが、こちらはボツに。自分のボーカルが聴くに堪えなかったので(笑

そこからさらに時がたち、今回Synthesizer Vを使ったこの曲をリリースしたというわけです。

なぜこんなにも長期間寝かしていたかというと、やはりText-to-Speechを使ったボーカルというものを「不完全なもの」と考えていたからだと思います。Synthesizer Vが登場したことで、ちゃんと世に出せるクオリティのものになったと判断したわけです。
誰かボーカルを探して歌ってもらうという選択肢もあったんですけどね。そこまでの情熱がなかったのかなぁ……。

MVも作ってみたのでこちらもよかったら。